日々の積み重ねが、新しい歴史をつくる 「つぎの西陣をつくる交流会(つぎにし)Vol.8」

2022.12.26


「西陣」という呼び名が、いつ生まれたか知っていますか?
その起源は、1467年に起きた応仁の乱。西軍の大将である山名宗全が、西に陣を敷いたことが由来なのだそうです。

そんな西陣の歴史が生まれてから、2022年でちょうど555年。この一年は「西陣呼称555年記念事業」をはじめ、特に大きな盛り上がりを見せた年でした。

熱気の中で開催されたのが、つぎの西陣をつくる交流会、通称「つぎにし」。既に西陣で活動をしている人も、これから関わりを持ちたい人も、みんなが集い語り合って、交流できる空間です。

過去に7回が開催されましたが、まだまだ「はじめまして!」と、新しいつながりが生まれているのだそう。8回目となる今回は、どんな会になるんだろうと、会場に遊びに行ってみました。

2022年11月30日に開催された「つぎにし Vol.8」。会場は京都信用金庫西陣支店2階「クリエイティブコモンズNISHIJIN」です。イベントの様子は、リアルタイムでオンライン配信。リアルとPC上に、合わせて約70名が集う中、司会のタナカユウヤ氏の挨拶で開会しました。

オープニングトークに登壇したのは、「sampai」代表の宮武愛海さん。第5回目のつぎにしにもプレゼンターとして参加した宮武さんは、伝統産業や地域産業で出る産業廃棄物を再利用したアクセサリーブランドを展開しています。

今回の会場でもある、京都信用金庫西陣支店・支店長の三輪文彦さんと一緒に、ここ数ヶ月間のsampaiや西陣の動きについて振り返りました。

宮武:写真を見返してやっと何があったか思い出せるくらい、目まぐるしくて凝縮された数ヶ月間でした。8月には、ここ京都信用金庫西陣支店を会場に、「縁日と手仕事ワークショップ」がありましたね。

三輪:西陣で手仕事を行う企業さんに集まっていただき、体験型のワークショップを開催しました。お子様連れを中心に40〜50人くらいが集まり、賑わいを見せましたね。

宮武:9月は職業体験として、sampaiに中学生を受け入れました。仕事を体験した後、事業者さんを訪問してもらう半年間のプログラムを実施中で、今は身の回りの服をどうやったらアップサイクルできるか考えてもらっています。西陣織のフクオカ機業さんと一緒に、「職人すごろく」という企画も考えました。どちらも西陣の文化やものづくりについて学び、理解を深めてもらうことができたと思っています。

宮武:また前回のつぎにしで、ソニーコンピュータサイエンス・京都研究所の竹内さんが発表されていました。私は今、別チームの研究にアテンドさせていただいています。AIが和柄を研究して「これが和柄」というひとつの最適解を探すというもの。完成した柄を実際に織る段階では、こちらもフクオカ機業さんに協力をお願いしています。最近は西陣の中で協業しようという動きが特に盛んだなと思いますね。

三輪:11月には、西陣織工業組合で「西陣GoGoマルシェ」が開催されていました。その中で「西陣designグランプリ」の受賞作品の展示がされていましたが、そこでグランプリを受賞していたのが、『N’s1182』の前田雄亮さん以前のつぎにしのプレゼンターでもありましたね。西陣織を利用したドレスで、とても格好良かったです。

宮武:同じく11月12日には、京都市役所前にある京都信用金庫「QUESTION」で、西陣の食や伝統を楽しんでもらえる「西陣Fes」を開催しました。アクセスの良いところで、まずは西陣を知ってもらえるきっかけをつくることが狙いのひとつでした。

最近はインバウンドも少しずつ増え、京都や西陣が海外から再び注目されているように感じています。sampaiのことも、台湾のテレビで放映されていたそうです。今日の交流会をきっかけに、また新しい共創が生まれて、西陣が盛り上がっていったら嬉しいなと思いますね。

オープニングトークの後は、西陣に関わりを持って活動をされている6名がプレゼンテーションを行いました。それぞれの発表をダイジェストでご紹介します。

まちを知るための場づくり〜地図・まちあるき・朝カフェを通して〜
南知明氏(上京ちず部・デマチクラバー・上京朝カフェ)

トップバッターを務めたのは、左京区出身の南さん。実家から歩いてすぐのところに出町商店街があり、小さな頃から商店街やまちあるきに慣れ親しんできたそうです。店主さんとの信頼関係ができ、安心して買い物ができるのが商店街の魅力と語る南さんから、現在の活動について発表していただきました。

南:近隣住民や観光客向けの食べ歩きツアーを、商店街のイベントに合わせて年に数回行っています。参加者は新しいお店を知ることができるし、お店はお客さんの開拓になるので、お互いにメリットがありますね。 また、みんなでまちあるきをして、実際に見た情報を地図に落とし込んで共有したり、地図を使ったワークショップをする「上京ちず部」の活動を約6年間続けています。同じ場所を歩いているのに、世代によってまったく違う情報の地図ができるのが面白いんですよ。そして、参加者が自由に話して交流できる「上京朝カフェ」を、月に1回開催しています。主に毎月第4木曜日の朝8時15分から9時30分頃まで、西陣CONNECTでやっていますので、ぜひ気軽に参加していただけたら嬉しいです。

上京朝カフェ: https://www.facebook.com/kamigyoasacafe

京都の手芸と各地の工芸を組み合わせて世界を目指す
遠藤 恒希氏(Art Fiber Endo)

西陣で手芸素材専門店「Art Fiber Endo」を経営する遠藤さん。店舗隣接の染色工房では、1000色を超える多彩な色の素材を提供しています。こうした手芸の素材と日本各地の工芸とを組み合わせ、海外に向けたクラウドファンディングの挑戦を始めました。

遠藤:実はこの発表を終えた後、すぐにクラウドファンディングのページが公開されます。今回は石川県を代表する伝統工芸品・九谷焼とコラボレーションをし、九谷焼タッセルという商品を開発しました。これまではイベントに出展して販路を拡大することが多かったのですが、コロナ禍でそのほとんどが延期、中止になってしまいました。ですがクラウドファンディングなら、西陣にいながら企画、実行していくことができます。今後公開予定のものも、いくつか企画中です。各地の工芸や職人さん、様々な方々とコラボレーションして、海外にも日本の伝統を届けていきたいと思います。

Art Fiber Endo: https://www.artfiberendo.co.jp/
クラウドファンディングサイト:https://www.kickstarter.com/projects/art-fiber-endo/kutani-thimble-and-tassel/

地域に眠る資源の編集について -西陣空き家のバリューアップ-
佐藤 博喜氏((株)空間編集舎 京都西陣BASE)

「地域に眠る魅力を新たな価値で贈り届ける」をコンセプトに、東京と京都の2拠点で活動する佐藤さん。各地域で空間づくりプロデュースなどの様々な取り組みを展開する中、西陣ではロス資源を活用した商品をつくるプロジェクトが始まりました。

佐藤:私たちが西陣に来たのは約1年前。京都は関西の各府県にアクセスが良いので、商品の開発拠点を構えることになりました。拠点として選んだのは、西陣にあった築100年以上の町家。西陣空き家のバリューアップをテーマに、「京都西陣BASE」と名付け、日本一のアップサイクルストアを目指していきます。2022年12月10日にオープンする予定で、ショップのほかにも、シェアキッチンやアトリエ、スタジオなども併設しました。集めた不要なものをクリエイターと編集し、価値をつけて届けるのが私たちの役目。使われていない廃材などがあったら、お声がけいただけたら嬉しいです。

(株)空間編集舎 :https://www.kukan-henshu.jp/
京都西陣BASE Instagram:https://www.instagram.com/kyoto_nishijinbase/

少女の居場所づくりから見えてきたもの
澤田 果歩氏・井上 紗香氏(一般社団法人京都わかくさねっと「わかくさリビング」)

いつでもふらっと来て、お話したり、ご飯を食べたり学んだり。わかくさリビングは、温かなまちのシェアリビングです。代表の澤田さん、副代表の井上さんから、活動に対する想いをお話しいただきました。

澤田:わかくさリビングには、10代から20代の若い女性が中心に集まっています。高校生や社会人など、皆さんの職業や背景は様々。ここでは話したくないことは話さなくて良いですし、こちらから聞くこともありません。社会で生きる上で自分の役割を求められることが多いですが、わかくさリビングは「ただいるだけ」で良い場所。誰かと過ごしたり、自分を好きなように表現したり。地域の中でも、そんな安心・安全な場所が増えてきたら良いなと願っています。

井上:私はこれまで、「何があったの?」と聞かれることにしんどさを感じたことがありました。わかくさリビングでできたつながりだから、私のその辛さを受け止めてもらえたと思っています。皆さんもそれぞれ辛さを持っていると思いますが、この居心地の良さをぜひ感じてもらいたいですし、これからも頑張って活動をしていきたいです。

わかくさリビング https://kyotowakakusa.net/activities/wakakusa-living

畑から届ける、よろこびやさいとエディブルフラワー
龍田 春奈氏(咲里畑(さくりばたけ) )

西陣で生まれ育ち、小さな頃は船岡山でよく遊んでいたという龍田さん。2017年、会社員として働いていたご両親が一念発起し、退職して新規就農。当時働き方に悩んでいたという龍田さんも、会社を離れ、2018年に畑を手伝い始めました。西陣から車で約30分の位置にある、西京区の大原野で営む「咲里畑」で、農ある暮らしを生き生きと楽しんでいます。

龍田:私たちのこだわりは、農薬や化学肥料を使わずに育てていること。そして、毎日「よろこび」の気持ちを持って野菜と接していることです。皆さんも「稼がなきゃ、急いでいっぱいつくらなきゃ」といらいらしている人より、楽しくて元気な農家さんから野菜を買いたいと思いませんか?食べられるお花であるエディブルフラワーも育てていて、レストランやカフェ、料亭に卸したり、友達の結婚式で食べられるブーケをつくったりもしました。季節の野菜やハーブは、オンラインストアでも販売しています。毎週土曜日には、畑のお手伝いを募集しているので、ぜひ遊びにきてくださいね!

オンラインストア:https://sakuribatake.theshop.jp/
Instagram:https://www.instagram.com/sakuribatake/

公園からはじまる、世代・領域・地域を越えたつながり
瀬川 航岸氏(SOCIAL WORKERS LAB コーディネーター)

SOCIAL WORKERS LABは、領域や分野を越えて、多様な人びとの出会い・関わり合い・学び合いを生む社会実験的なプロジェクトです。オンラインを活用したイベントやワークショップを行っていましたが、2022年4月に事務所を船岡山の公園内に移転。コーディネーターとして活躍する瀬川さんから、「FUNAGORA」を中心とした活動の発展をお話しいただきました。

瀬川:事務所が船岡山に移転してから、地域に根ざした実態のあるコミュニティをつくろうと模索中です。その中で「FUNAGORA」という取り組みが始まりました。これは、船岡山とAGORA(ギリシャ語で人が集まる場所)とを組み合わせたネーミングです。それぞれがやりたいことを声に出し、考え、交流できるようにと、毎月1回オープンパークを開催しています。最初は地域の人との関わりに迷ったこともありましたが、半年と少しが経ち、次第に賑わいが増しています。これからも多様で、自由で、やさしくて、面白い暮らしを見つけ、考えられるような企画を進めていきたいです。

SOCIAL WORKERS LAB:https://swlab.jp/

6名のプレゼンターの発表の後は、グループに分かれての交流タイム。
「あの発表、もう少し詳しく聞かせて!」「実は私、こんな活動していて……」と、一層盛り上がりを見せていました。

西陣は555年を迎えた歴史と伝統から、ハードルの高さを感じるかもしれません。しかし一歩足を踏み入れてみると、きっとその印象が変わるはず。大きな事業から個人単位の活動まで、日々様々な動きが生まれています。まずはSNSで「#つぎにし」「#play西陣」と検索して、こっそり覗いてみてください。

活動に巻き込まれたり、巻き込んだり。こうした1日1日の積み重ねが、次の歴史をつくっていくのだと思います。

今年度最後となる第9回目のつぎにしは、2023年3月に開催予定とのこと。
それまでに、一体どんな活動が生まれているのか、今から楽しみで仕方がありません。
ひょっとしたら、次のプレゼンターを務めているのは、あなたかもしれませんね。

執筆:小黒恵太朗
編集:北川由依

 

 


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