2024.09.14
今回は、オランダのアムステルダム滞在中に本記事を書きました。
さて、我ら夫婦が東京から京都の西陣エリアに移住して、この夏で早くも4年目に突入しました。
最近では、京都移住を考えている方の相談を受けたり、京都移住したばかりの方と話したりする機会も増え、いよいよ自分たちも「移住者」から「京都に住まう、受け入れる側の人間」になってきたなと感じます。
移住はもちろん、国内外を旅するのが大好きな我々だからこそ、「受け入れる/受け入れられる」という両面から西陣について書きたいと思います。
アムステルダムの駅前。たくさんの自転車が行き交う様子は、京都を思い出す
私は昔から海外旅行が大好きです。好きな理由の1つが、自分が外国人として、「受け入れられる側」になれること。
普段、日本で暮らしていると、海外から来た観光客を「受け入れる」立場です。西陣エリアにも、素敵な寺社や町家、西陣織の会社などが点在しており、スーツケースをガラガラと引いて歩く海外の方々を見かけます。「わざわざ遠い国から来てくれてうれしいな」「京都や西陣の文化を楽しんでくれると良いな」と強く思います。
しかし、受け入れる側の立場は、良いことばかりではありません。
例えば、混んでいる道の途中で地図を見るために急に立ち止まる方、両手に大きなスーツケースを抱えて混雑した場所を通る方、駅の改札機を長時間占領している方など。
どうしても「周りの迷惑になるよな……」と思う反面、この感覚こそ、ずっと「受け入れる側」だから溜まってしまうものかもしれない、とも思いました。
ドイツから特急電車でアムステルダムに到着
例えば今回訪れたアムステルダムもそうですが、電車やバスの切符を買うだけでも一苦労です。どの鉄道会社なのか、どの券売機から買えば良いのか、切符の種類はどれなのか、どのように乗り換えれば良いのかなど、わからないことばかり。
日本では何ら問題なく行っている「電車に乗るための切符を買う」という行為も、一気にハードルが上がります。
このような苦労を味わってから西陣エリアに帰ってくると、今まで当たり前だったことの多くが、海外から来た方には難しいことに気付きます。特に西陣は電車の駅から遠く、バスを使わないとなかなか来られない場所。特に、京都のバスは路線図が複雑で、海外の方にとっては迷うことも多いかもしれません。
このように自分が「受け入れる側」と「受け入れられる側」で感じる気持ちは、両方とも西陣に移住してきても変わりません。
「観光地」よりも「現地の暮らし」に惹かれる
海外で過ごすなかで、あらためて西陣を思い出すと、有名観光地とは少し違う立ち位置であるところが良いなぁと感じます。その大きな理由は、西陣を歩くと感じられるリアルなローカル感です。
アムステルダムの街中を散策すると、世界各国からの観光客で溢れており、有名観光地らしくにぎわっています。日本にはない様式の建物や、街中に溢れるチューリップ、運河など、どこを歩いても新鮮で楽しいです。
アムステルダム中心部の繁華街。建物を眺めるだけで楽しい
海外に行ったときは、必ず現地の本屋を散策する
このようなにぎやかな場所ももちろん楽しいのですが、私が旅先で求めているのは、いかにローカルな情報に触れられるか。例えばローカルな乗り物や小さい個人商店、マーケットなどに行くとわくわくします。地元の人たちの生活に触れることに興味があるのです。
西陣は、雰囲気抜群の町家が並び、素敵なカフェや本屋、八百屋などもあり、住民の方々が立ち話をしていて、道路で子どもたちが遊んでいて、そこに京都の暮らしが存在しています。また、あちこちから聞こえてくる西陣織を織る音も、風情がありますよね。
もちろんローカル感は、全国どの地域でもありますが、やはり町家や寺社が並んだ独特な雰囲気は西陣ならでは。特に夕方の雰囲気など、ちょっとエモさも感じるほどに落ち着くのです。
私は京都に遊びに来る人たちに、心から西陣を体感してもらいたいなと思っています。「受け入れる/受け入れられる」の両側を知っている自分たちだからこそ、それを強く感じます。
(執筆&写真・俵谷夫妻)