余白で遊んで仕事をする。 日常の延長と町内会の関係性

2022.01.24


遠出する機会が減ったからこそ、より一層地域のつながりが見えるようになりました。地域で一緒に暮らす人たちとのつながりを大事にすることで、あたたかい気持ちを抱いている人も多いのではないでしょうか。

今回は「Magasinn Kyoto(マガザンキョウト)」を運営する岩崎達也さん(以下:岩崎)と、「円卓」を運営する庄本彩美さん(以下:庄本)に対談していただきました。

お二人の運営するお店は、同じ椹木町通(さわらぎちょうどおり)に面したご近所同士。同じ町内会で、他の住人との関わりも多いそうです。お店の前には、不定期で野菜販売も行われています。野菜を並べると、地域の方から通りすがりの人まで、野菜を見たり買ったり。いろいろな人とのコミュニケーションが絶えない2つのお店には「町内会」というものが欠かせないと話してくれました。

岩崎達也さん(マガザンキョウト 店主)
「もしも京都のローカルカルチャーマガジンが空間になったら」という着想で泊まれる雑誌をコンセプトにしたマガザンキョウトを運営。雑誌にある特集のような面白いもの、新しいものが空間の中にインストールされているところに滞在できるのが特徴です。

庄本彩美さん(円卓 店主)
料理から季節を感じるというコンセプトで、お弁当やケータリングの作成を中心に行う。看護師の仕事をしている中で、食のおもしろさや実家の味噌・梅干しの良さに気づいて食の道へ。2018年から西陣での活動をスタート。

流れ着く場所、西陣

岩崎:この場所でマガザンキョウトを始めて6年目になりますけど、向かいがあいたのでどうですか?と声をかけたのがきっかけですよね。

庄本:はい。もともと、西陣の別のところに場所を構えていたのですが、町家に住みたい!と思っていたのでお声がけいただいた時は嬉しかったです。

岩崎:ご近所になる前から、マガザンに遊びにきてもらったり、ポップアップのお弁当をお願いしたりとゆるいつながりはありましたけど、いわゆる日本の食文化がこのエリアに欲しい!と思って。

庄本:私も最初は左京区に住んでいて西陣エリアのことを全然知らなかったんですけど、住んでみるとバスはたくさんあるし、スーパーも郵便局もある。西陣織だけじゃなくて豆腐屋さんとか味噌屋さんとか、日常で必要なものがぎゅっと揃っていますよね。

岩崎:二条城まわりの城下町としての役割が今も残っている感じはありますよね。僕も最初は四条の方で店をやっていたんです。東京から京都に来てお店を出そう、という流れだったので、街中に出したほうがいいと思っていました。でも、やってみて、どうやらそうとも限らないらしいぞ?と気づいて。

庄本:なにがきっかけで、そう思われたんですか?

岩崎:来るお客さんの感じとか、自分が好きになっていくお店のことを考えると、京都自体がコンパクトな街だからこそ、良いお店を作ればどのエリアであっても来てもらえると感じるようになりました。物件を色々探すために不動産の方に相談もしていたんですけど、たまたまSUUMO(スーモ)で見つけて「ここでいいやん!」と決めちゃいました(笑)

庄本:たまたま西陣のエリアだった、という感じなんですね。私も左京区に住んでいる時に町家に住みたいと思って探していると、知人に「西陣エリアは空いている町家が割とあるよ」と教えてもらったのがきっかけです。なので、私もたまたまですね。

岩崎:西陣に流れ着いた、という感じですよね。でも、意外と新しい場所を構えてか始めたい人にはいい気がしています。

庄本:たしかに、新しく活動している若い人も結構いるイメージです。

岩崎:多分、エネルギーが過剰にいらないからだと思います。出来上がっているコミュニティに入らなきゃ!っていうのもあまりないし、まばらにいろいろなお店があるからこそ入りやすいし、歓迎してくれる余白を感じます。

庄本:たしかに。いい町家に安く住むっていうのが叶う稀有なエリアかもしれないですね。

岩崎:競合しにくい感じもあるし、ここお店だったんだ、っていう衣食住一体な雰囲気がありますよね。本来であればお店って月曜から金曜まで空いてないと、っていうのがあると思うんですけど、それもない。どちらかというと、暮らしメインでその延長線でお店があるというか。

庄本:それぞれの営みをした上で、近所付き合いもバランス良く成り立っている感じですよね。住んでいる人も多くて暮らしっていう比重がいい意味で大きいからこそ、受け入れられやすいのかもしれないですね。

余白を感じられる場所

岩崎:この場所でマガザンを始めた時は、目的を持って来てくれる人がほとんどだったので、話しやすいメリットもあった一方で、お店を開けていなかった時の申し訳さもありました。ですが、他のお店も少しずつ増えてきて、マガザン以外でも楽しめるエリアになってきていると思います。

庄本:私もお客さんが来たら周りのお店をいろいろ紹介しちゃいますね。みなさん結構はしごしてくれて「円卓さんから聞いて来ました!」って言ってくれる方も多いみたいで、うちだけじゃなくこのエリアをまるっと楽しんでもらえている気がします。個性の立っている面白いお店も多いですし、あとはこの店に引っ越してきてすぐ地蔵盆があって町内会のみなさんにすぐ挨拶することができたのも大きいかもしれないです。

岩崎:町内会っていうつながりに溶け込めたのは大きいかもしれないですね。僕が引っ越してきて、当時の町内会長さんに挨拶に行ったら「あの人らはああ見えてちゃんとしている」っていうのを言って回ってくれたみたいで(笑)そこから挨拶しやすくなったし、地蔵盆の順番がたまたま僕らに回ってきて会社の行事のひとつとして参加したりとか。

庄本:本当にすんなりと受け入れてくれて、ありがたかったです。

岩崎:巨大な影響力がないエリア、っていうのもあるかもしれないですよね。大きい資本のものがないエリア。クリエイターが多いのもそれが理由の一つかなと思いますね。すでに出来上がっているところにクリエーションする余地って少ないじゃないですか。

庄本:余白があるからこそ、クリエーションだったり、私のような人も挑戦しやすかったりするのかもしれないですね。余白というのももちろんですけど、実際町家がいくつか空いていることも多いので「西陣どう?」って言いやすいです。物理的にも精神的にも「余白」というものがあるのかもしれないです。

地域と一緒に仕事をすること

岩崎:円卓さんが近所にてくださってから、定期的においしいごをいただいて、本当に感謝しています。ご近所さん同士のご飯会も何度か開催していますしね。

岩崎:うちのメンバーのミーティングを兼ねてとか、ご近所さんがちょっと集まったご飯会とかで、円卓さんには本当にお世話になっています。全員参加ではないですけど、町内会の集まり、みたいな感じですよね。コロナ前まではマガザンで自主的に開催していた餅つきも、来年こそやれたら嬉しいですね。ちょうど路地でやっていて、近所の人もお餅を貰いに来てくれたんですよ。

庄本:この前マガザンと円卓でやった味噌作りも楽しかったですね。別の日の、お互い別々のイベントをやっていたときもお互いにお客さんが行き来してくれることもあり、お客さんをシェアしているというか。コンセプトが被ってないっていうのもあるかもしれないですけど、もし被っていたとしてもこの規模感で気にするところではないですよね。

岩崎:そうですね。まちづくりをしたいという気持ちがあるわけではないんですが、素敵なチャレンジをしている人と一緒に何かやりたいし、そういうお店に行きたいという思いもあるし。それらの積み重ねが今、という結果だと思います。町内会長になって最初に僕が物件を紹介したのは「Kumagusuku」の矢津さんなんです。町家を継ぐという形になるので、素敵にリノベーションしてくれそうなのは矢津さんだな!と声をかけたという経緯だったので。

庄本:岩崎さんの町内会長としての役割に助けられた部分もたくさんありましたし、私も田舎の出身なので町内会や近所の集まりの良さは小さい頃から感じていました。だからこそ、ここに引っ越してきたときも積極的に挨拶に行くようにしていたのかもしれません。

岩崎:本当にちゃんとしてらっしゃるから、すぐ溶け込んでました。他には、マガザンと円卓さんでパッケージサブスクリプションをやりたいなっていう話をしていますよね。

庄本:文化的重箱、ですね。

岩崎:もともとマガザンの物販や定期販売でカルチャーを届けられたらいいな、という着想からなんですが、1段はご飯が入っててほしい!という気持ちがあって。

庄本:ちょうどコロナになった時に、出店やケータリングの仕事が少なくなってしまって仕事の方向性を変える必要があって。そこで、オンラインの販売ができるようにと店の奥にそうざい製造業の許可も取ったたんです。時間はかかりましたが、おかげでオンライン販売や保存食販売できるようになったので、マガザンさんや他の方ともコラボがしやすくなりました。

岩崎:どんどんアイデアを具現化できるようになってきましたよね。これからも長いお付き合いになると思うんですけど、行動指針的なものってありますか?

庄本:難しいですね(笑)マガザンさんとのコラボもそうですけど、もっと地域やエリアの同世代の人たちとも一緒に仕事を連携していきたいなとは思っています。でも、自分たちの世代だけが楽しくなるのではなく、おじいちゃんおばあちゃんも巻き込めるイベントをつくっていきたいという思いも強いですね。

岩崎:そう考えると僕たち両方のお店の前でやっている野菜販売って強力じゃないですか?

庄本:確かに(笑)この場所はスーパーまで徒歩10数分で遠いと感じる方もいます。日々の営みの延長で野菜を買ってくれて、わたしたちもコミュニケーションが取れて。

岩崎:しかも、買った野菜を配ってくれることも多いですよね。配り合い文化がある。

庄本:私もケータリングのおかずが余ったら配ることも多いです。でも、そういうことができるからこそ困ったときにも相談ができる環境だと思うし、ありがたいです。

岩崎:そうですね。僕も地域といろんなコミュニケーションをとりつつ、また町家が空いたら素敵な人に声をかけつづけることを行動指針にしようと思います。

執筆:高橋奈々
編集:北川由依


記事一覧に戻る

CONTACTお問い合わせはこちらから