何より大事なのは、”人として魅力的”かどうか。 心の方位磁針が指す方へ。西陣発のアートプロジェクト。

2022.12.05


まちづくりや地方創生といった言葉がメディアで注目を浴び、地域コミュニティの再興が叫ばれてしばらく。全国各地でさまざまなプロジェクトが立ち上がり、コラボレーションが起き、コミュニティが誕生しました。

どんなプロジェクトやコミュニティであれ、核にあるのは人同士のつながり。

今回は「24JIN NEXT 2022」でコラボレーションをした、株式会社JAM corporation代表取締役の福間あきさん(以下:福間)、有限会社太田畳店の3代目代表取締役の太田成樹さん(以下:太田)、N’s 1182代表の前田雄亮さん(以下:前田)に鼎談していただき、どのようにして人がつながり、関係を紡いでいくのか、その本質に迫りました。

福間あきさん
株式会社JAM corporation代表取締役。20代の頃より、東南アジア圏のアーティスト作品をアメリカへ紹介し、広く届けるアートキュレーターとして活動。現在は京都在住で、京都にゆかりのある作家の作品の展示会などを手掛ける。クラフトマンシップを持つ職人との協働プロジェクトの実績もあり、人と機会のハブとなっている。

太田成樹さん
京都・西陣に構える1939年創業の老舗畳専門店、有限会社太田畳店の3代目代表取締役。事業承継をして20年の節目を迎え、一級畳製作技能士を有する職人とともに伝統の技を継承しつつ、子どもが思わずコテリと横になりたくなる柔らかい畳「coteri(コテリ)」などの新ブランドなども幅広く手掛ける。

前田雄亮さん
N’s 1182代表。実家は先先代の祖父から続く西陣織の着物の帯地を製造している。「自分のイメージする納得できる服が世の中にない」といった課題意識から、帯地を用いた服造りをスタート。2020年には京都信用金庫主催のビジネスコンテストで西陣織を使ったアパレル事業についてのアイデアを発表し、2位に入賞した。

伝統工芸の可能性を拓くインスタレーション

太田:福間さんと初めてご一緒したプロジェクトは、3社合同のアートユニット「丸太こーぽれーしょん(仮)」の「墨流し畳」でしたっけ。

福間:そうです。畳職人×染職人×アートディレクターで組んだアートユニットの作品「墨流し畳」。西陣の畳職人である太田さん、南丹の京和紙染職人さんとユニットを組み、僕がアートディレクションを担当しました。コンセプトは、川の流れと畳の上で描く枯山水。どういった方向で進めていくかを考え、技術面ではサイズや配色について、試行錯誤を繰り返しながらつくりあげました。

<動画リンク:https://youtu.be/QG6LI1aeSjY

プロジェクトの中でもっと広く伝統工芸職人さんと繋がりが欲しいと思っていたときに、お世話になっていた方のツテで太田さんをご紹介いただき、会いに行ったんです。

太田:福間さんからプロジェクトのお話をうかがって、「こういう人もいるよ」と職人さんをご紹介したら、間を置かずその方のところへ行かれた。まさかそんなすぐにとは思っていなかったので驚きました(笑)。行動力のある方だなと思ったのを覚えています。

福間:「これはチャンスだ!」とすぐに足を運びました(笑)。プロジェクトは季節によって異なる気温や湿度、お互いの繁忙期の関係で、なかなかスケジュールが決まらず難航しましたが、面白かったです。

太田:その次にご一緒したのが、「西陣における協働やこれからを考える2日間」のテーマで開催された「24JIN NEXT 2022」(主催:西陣ネイバーフッド)で、伝統技術で作り上げる次世代バンライフと題したインスタレーション。僕はバンの中に敷く畳を作らせていただきました。サイドルーフから降り注ぐ陽光がやわらかく、とても素敵な空間になったと思います。

福間:ここでは新たな取り組みとして、西陣の若手の作家「N’s 1182」の前田くんにも参加してもらいました。

前田:人伝で福間さんと出会い、お声かけいただいて、西陣織を活用したインスタレーションを担当しました。西陣織のタイルをバンの外装部分にペタッと貼り付けられるようにしたもので、当日来場したご家族の子どもさんが実際に手に取って楽しまれている様子が見られて嬉しかったですね。

「たまさか」がつなぐ縁。コラボのきっかけは「いい人」だから。

太田:僕は京都・西陣という地域で長くお仕事をしてきましたが、福間さんって地域にこだわりってあるんですか?

福間:そこまで強いこだわりは無いですね。今回のように西陣というくくりで呼んでもらうのは嬉しいんですけど、出身は京都じゃないですし、あまり西陣にこだわってはいません。たまさかご縁があって、一緒に仕事をしている人たちや仕事したいと思える人たちが西陣に多いだけであって、個人的にはあまり西陣にアイデンティティは持ちたくない。

ただ、アートの話で言うと、作家の方が作品としてアウトプットを出される際に付加価値として”地域”を乗せるのはあると思います。

その地域だからこそ育まれる感性や、生み出される作品ってあるじゃないですか。例えば、ベトナムで日本のような着物は生まれたかというと、それは生まれない。気候や原材料がまるで違います。国内の例で言っても、気候によって住まいの建物の形は大きく異なります。雪が多い地域、台風が多い地域、海に近い地域、それぞれにその土地で生きやすく発展してきた形がありますよね。アートは土地が持つ独特の気候や文化の影響を少なからず受けているので、それがアウトプットとして出てくるのは当然かなと。

前田:僕も実家が西陣にあり家業が西陣織の製造をしているので、アイデンティティはもちろん作品にも影響を受けています。つくっている服は西陣織の帯地を使用していますし、そこは服造りの中で外せない部分です。

太田:福間さんの話に「一緒に仕事をしたいと思える人」とありましたが、それってどんな人なんですか?

福間:言葉にするのが難しいんですけど、結局「いい人」と仕事していきたいんですよね。僕はBARをやっているので、酒の席で一緒になって「気が合うな」ってところから始まることも多いです。仕事云々の話は置いておいて、人として一緒にやりたいかどうか。そこが決め手になっています。

前田:僕も何度か福間さんとお酒の席をご一緒させていただきました。ちょっと気になるんですけど、福間さんはどういった人を「面白いな」と思うんですか?

福間:一度死にかけた人って面白いです(笑)。僕は一度ニューヨークでホームレスになった経験があるんですけど、極限状態を経験したことによって磨かれる価値観ってあるじゃないですか。コンパクトにまとまろうとする人が多い今の時代の中で、希少な極限状態を経験した人が好きですね。今一緒に仕事をしている職人さんたちは手にした技術に対してプライドを持っていて、バックボーンがしっかりしているので、特に面白いなと感じます。

太田:僕、そんな追い込まれた経験あったかな……。借金くらいですよ?(笑)。家業を継ぐとなると色々ややこしい部分があるので、修羅場といえば修羅場でしたけど。

福間:そこが好きです。反りが合うなというか、一緒に仕事をさせていただいて面白い。

太田:ありがとうございます(笑)。家業に入ったのが20年以上前なので、もうかなり昔の話になりますが。

前田:僕はちょうどその頃に生まれました。

太田:そんなに年が離れているのか(笑)。30代後半まで思春期だった僕にとって、彼のような人は驚きです。福間さんとは遊び半分、仕事半分で一緒にやらせていただいています。お互いの信頼関係があってこその協働で、どちらから声をかけたともなく、今はお互いに面白い話があれば相談するという関係になっています。

世代を超えて、面白い人たちとさらに面白く

前田:先輩方のやりたいこと、好きなことをしている姿勢には学ぶところが多くて、仕事として「売れないといけない」「稼がないといけない」といった部分はもちろん、お金云々を抜きにして、好きなものをつくり続けていく楽しさを、今回のプロジェクトを通して教わりました。

福間:厳密に言うと、「やりたいことをやっている」という感覚はあまりないんです。ただ、やると決めた以上は楽しみたいし、楽しくやれる人たちと働きたい。どんな化学反応が起こるんだろうとわくわくしながら働きたい。最初からゴールがあって、そこに向かっているわけではなく、気づいたら流れ流れてこうなっていた、の方が実感として確かです。

太田:僕も一緒で、楽しいことに引っ張られながら漂流しています(笑)。天性のオタク気質なので、楽しいことを見つけると一気に没頭してしまう。その分熱が冷めるのも早いですけど。

福間:キュレーターやプロデューサーとして仕事をしている中で、「どうすればアーティストとして食っていけるんですか?」と聞かれることが多いのですが、お金を稼ぎたいならもっと効率的な方法や適した仕事があると思うんです。自分で作品を作り出す人、つまりアーティストって、ある種“異端者”なんですよ。太田さんがおっしゃっていたように、天性のオタクのような、強い熱量が無いとなかなか作品は生み出せない。何も無い人が努力で辿り着ける境地じゃない。だからこそ、そうした異端者を見つけて一緒に仕事ができると楽しいんですよね。前田くんにはその可能性を感じているので、これからがとても楽しみです。

前田:尊敬している先輩にそう言っていただけると嬉しいです。まだふわっとした夢というか、野望なんですけど、今西陣で活躍している40代50代の大人たちに対抗できるような若者の軍団をつくってみたいんです。自分はまだ20年ちょっとしか生きていないので、先輩方からたくさん学ぶ立場でまだまだ修行中の身なんですが、ぶつかり合った方が地域も盛り上がるじゃないですか。

太田:上の世代と健全な喧嘩ができるって良いですね。福間さんは売られた喧嘩はちゃんと買ってくれそうな方ですし。

福間:いいよ。速攻でぶっ潰すけど(笑)。

前田:負けないように戦略を練って、何とかして勝ちたいです(笑)。

福間:負けてへこたれて離れていくことが無いのであれば、どれだけ噛みつかれても良い。かわいいなって思う。これからもこのメンバーでやっていきたいプロジェクトが控えているので、本当に今後が楽しみです。

執筆:中野 広夢
編集:北川由依

 


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